まず、秦大津父はオオカミを『貴い神』と言っていますが、
欽明天皇は、これを受け入れておられます。
日本で野生の犬を「オオカミ」と呼ぶのは、
野生の犬が『大いなる神』であると、認められていたからに他なりません。
犬やオオカミを特別視する文化は、
モンゴル人が自分たちの祖先をオオカミとする、
「蒼き狼ボルテ・チノ」と妻「惨白き牝鹿コアイ・マラル」の、『モンゴル秘史』が有名です。
これは、オオカミをトーテム「部族・氏族・血族と信仰的に関係の有る、動物・植物・自然物など、一定の理論性を持つ団結の象徴」
とする、モンゴル人の伝説です。
ウイグル人もまた、
「半死半生の男を牝オオカミが助け、その間に生まれた子供がウイグル人の始祖」と、していたり、
オオカミがウイグル人を先導する物語など、独自のオオカミ伝承を持っています。
日本の漢文学者で東洋学者の白川 静 先生によると、漢字の『家』と言う文字は、
生贄として捧げられた『犬』と、先祖を祀る神聖な建物を表す「うかんむり」『宀』を合せた物なのだそうです。
漢字が誕生する以前の古代文字である「卜辞・金文」が使用された、
「殷(商)(紀元前17世紀頃ー紀元前1046年)」や「周(紀元前1046年頃ー紀元前256年)」の時代、
『犬』は、その血をもって祓い清める儀式が行われるほどの呪力を有する特別な動物で、王墓の要所には必ず『犬』も「魔除け」として埋められていました。
そこから『家』を建てる際にも土地神を鎮めるため、神聖な貴い動物『犬』を生贄として埋めて、地鎮としたのです。
エジプト神話には、様々な動物のトーテムを持つ神々が登場します。その一神、
ミイラづくりの神「アヌビス神」は、黒い犬またはジャッカルの頭部の半人半獣か、犬・ジャッカルそのものの姿で現されました。
ケルト神話では、半神半人の英雄『クー・フーリン』の名前の由来が「クーの番犬」ですし、
ヨーロッパの最も古い英文学の一つ、叙事詩『ベーオウルフ』は、「ウルフ」オオカミの名を持つ英雄王の物語なのです。
ローマ建国神話の「ロームルスとレムス」の双子も、牝オオカミの乳を飲んで育ちました、
このように、犬やオオカミを特別視する文化は、世界中に広く分布しています。
渡来人である秦氏も、その信仰を持ち、
そして同じような考え方が日本にも有ったため、秦大津父が云う事に、
欽明天皇は「それは何か良いことが有るでしょう。」と言われましたし、また良いことが有るであろう秦大津父を、重用される事によって、
その「良いこと」が天皇家に、しいては日本に「良いこと」と成るよう、お考えになられた訳です。
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