「常世物 この橘の いや照りに わご大君は 今も見る如」
大伴家持『萬葉州』巻18ー4063
常世物は「橘」の古名で、橘の葉が常緑である処よりそう呼んだと云われますが、その橘に付き蛹に成って完全変態する蛾の幼虫を、
皇極3年(644年)7月、駿河の国は不尽河(富士川)の辺りに居る、大生部 多なる者、
「常世の神」と称し「これを祀れば、貧しき人は富、老いし人は若返る」とて、
民衆を惑わし、金品を喜捨させて破産する者、多数におよぶも、
人々はその蛾の幼虫を台座に安置し、家財を寄付して讃え崇めて、往来では御馳走を振る舞い、
歌い舞い踊りて恍惚となり、富と若さが訪れるのを待ったと云う。
やがてこの「常世の神」と称する新興宗教団体の『蟲』の騒動が、都の周辺にもおよび来て、私財を失う人々が現れ世情を乱すと、
秦河勝はこれを懸念し、民衆を惑わす者として大生部 多を討伐し、騒ぎの鎮圧に当たりましたので、時の人が、
「太秦は 神とも神と 聞え来る 常世の神を 打ち懲ますも」
太秦の秦河勝が、神の中の神と云われていた常世の神を、打ち懲らしめたよ。
と歌い伝えました。
蛾・蚕 – 描画(昆虫)
図473・雄 図474・雌 図475・幼虫 図476・繭 図477・蛹
蛾の蛹、詰まり「繭」からは絹も取れますから、アマテラス大御神も蛾の幼虫である蚕を飼っていましたし、天皇陛下の御内儀にあらせられる皇后陛下も、
蚕を飼い、絹を紡ぎ、絹織物を織って居られます。
この「繭」を着て常世の国より流れて来られし神が、小さきスクナビコナの神です。
また、
神 伊 邪那美
神 伊 邪那岐
これが古事記に書かれた神々の、お母さん・お父さんである、イザナミとイザナギの元々の表記です。
神 伊 は聞いた事が有る方も居られるでしょう。
そうです、アイヌ語に出て来る「カムイ」の事です。
アイヌは13世紀始め、モンゴル帝国と組んだニヴフ(ギリヤーク)との戦争に敗れて大陸を追われ、縄文語文化圏へやって来た人々ですが、
古事記は縄文語で書かれていますので、古事記の完全口語訳本は、金田一京助のアイヌ語研究を例に上げ、現代語訳されています。
詰まり、
カム イ ザナミ
カム イ ザナギ
と、神々の、お母さん・お父さんの名前は構成されていて、「ザナミ・ザナギ」は蛹のことです。
古代、縄文時代の人々にとって、完全変態する「虫」の不思議は、神々の、お母さん・お父さんの名前にふさわしかったのでしょう。
そして、白山神社系に祀られる神は、神々の、お母さん・お父さんである、「イ ザナミ・イ ザナギ」と、
日本書紀で彼らの夫婦喧嘩を仲裁した神、ククリヒメが御祭神なのですが、
この白山神社の神器が「サナキ」蛹です。
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