「コーディネートの男性が来ているはずだけど、」
ノートンが通路を兼ねた広い場所へ出て、辺りを見回していると、
「アイリーン様とゴドフリー様ご夫妻ですか? わたくしはコーディネートの男性から頼まれまして―――― 代わって御案内させて頂きます、
バーナデット・チェンです。よろしくお願い致します。」
1人の女性がアイリーンの前へ歩み出で、丁寧に挨拶をした。
「アイリーン・アドラーです。よろしく、」
自然なアルトの声は音紋となり鼓膜を心地よく振るわせる。
これがあのアイリーン・アドラー―――― バーナデットはつかの間、無垢となり、
アイリーンの差し出される右手に応じて、女性同士の力強い握手を交わす。
「男性が来るはずじゃ無かったかな?」
ゴドフリー・ノートンが、バーナデット・チェンへ真っ直ぐに向き直って怪訝そうに言葉を発すれば、
「私は、SNSで独立した情報と議論を皆様へお届けする、フレッチャー・ロビンソン・ニュースの記者をやらせて頂いて居ります、
バーナデット・チェンです。彼は…… デモ隊の責任者になってしまった物ですから――――」
と男性が居そうな方角だろうか、チラと横を見やった。
「おお! いってみたい。」感嘆の声を上げる妻のアイリーンに、
「参加するって言うんじゃ無いだろうね。ちょっと待って、ちょっと待って、」
「外国人は参加しちゃ駄目なんですか?」
夫が慌てるのを面白そうに、アイリーンはそう問い掛ける、
「貴方は弁護士なんだから、何とかして下さいますわね。」
「君に何かあったらボクが全力で護るけど…… 状況わからないからね、ちょっと待って、
―――― とりあえずホテルにチェックインしよう! ねっ。あー、電話しておこう。」
「わたくしが交通の方は分かります、」アイリーン越しにバーナデットが話すのを、アイリーンは手で止める仕草をして、
慌ただしく宿泊先への連絡を怠らぬゴドフリーの後ろで、2人は顔を見交わし微笑み合っていた。
セントラルへ辿り着き、夫が部屋でシャワーを使うのも待ち遠しく、
アイリーン・アドラーはエントランスを急いで、黒大理石に張替えられながら開業当時の趣き残るロビーへ向かうと、
甘辛くアロマオイルの香るシャンデリアの下でバーナデット・チェンは待っていて、
「行きましょう。」
彼女はそう言い、アイリーンを喧騒の広場に闘いの地へと連れ出して往く。
8月31日の当初の予定は、民間人権陣線の企画で、
『8.31全国人民代表大会の5周年記念パレード(8回目の香港人権市民戦線FDCパレード)』だったが、
香港警察から予約を破棄されたため、その代わり、
カトリック教徒のグループ主催による『香港の逮捕者のために祈るパレード』が、
サザンプレイグラウンド[修頓球場]より、中央政府庁舎(中華人民共和国 香港特別行政区政府総部)まで、行われる事となった。
遅く着く2人を、そのサザンプレイグラウンドが迎え入れ、
外で撃たれる催涙弾の白煙と、客席へ居並ぶ人々の奏でる ❝Sing Hallelujah to the Lord(主へハレルヤを歌う)❞ は、
賛美を歌う、感謝を歌う、歓喜を救済者は死から蘇る。
In Southorn Playground, a growing crowd of “sinners” sings Hallelujah to the Lord. It’s one of a handful of #antiELAB non-protests planned today to circumvent the police ban on marching. pic.twitter.com/s2rLZORUAq
— Ryan Ho Kilpatrick 何松濤 (@rhokilpatrick) August 31, 2019
31日の夜22時頃、地下鉄 ❝太子駅・プリンスエドワード駅❞ で、市民に対する香港警察の無差別攻撃『香港太子駅襲撃事件』は起こる。
民主化デモ参加者と、親中派市民との喧嘩の通報を受けた香港警察の特殊戦術小隊が、太子駅構内へ雪崩込み、
車内までデモ参加者を追いかけ回して催涙スプレーを噴射、無抵抗の参加者を警棒で次々と殴打し、押さえ付けた数人を逮捕する場面が展開された。
巻き込まれる一般乗客にも無差別暴行を加え、「警察は黒社会だ!」と叫ぶ市民を映し出す動画はテレビやSNSで繰り返し再生された。
香港警察は突入後の太子駅を完全封鎖し、メディアはもちろん救急隊員さえ排除すると、負傷者は別の駅に特別列車で運び病院へ搬送したとしたため、
この暴行事件で、「市民側に死者が出た事を香港警察が隠蔽している」との疑念を市民らは抱き、
毎日、太子駅を訪れ献花しては、隣接の旺角警察署へ抗議する民主化市民のデモが続く。
9月1日に発生した民主化デモは、香港国際空港への交通を麻痺させ一部の航空便が欠航した。
2日、2018年の香港立法会の補欠選挙に立候補を届け出ていた新党『香港衆志』の周庭 氏に、立候補の資格がないと判断した問題で,
香港高等法院は周庭 氏の資格取り消しは無効との判決を下す。
同2日、林鄭月娥 香港行政長官は経済関係者らとの私的会合で、
「私に選択肢があるなら真っ先に辞任して深く謝罪したい」と発言する音声をロイター通信が報道。
4日夜、林鄭月娥 行政長官はビデオ声明で、【逃亡犯条例 改正案】を「撤回する」と正式に表明した。
今後は、香港政府が約束通り【逃亡犯条例 改正案】を撤回できるのか。そして、中国の中央政府がそれを許すのかを見極めて行きたい。
■ バーナデット・チェン
香港人、Web記者。SNSニュースサイト:フレッチャー・ロビンソン社。
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