⑤ ガルワン攻防(Galwan attack and defence)5

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 そしてロイの狙い通り特殊国境部隊 SFFによって彼の踊りは撮影され、チベット亡命政府職員ヤンゾム女氏にも動画は送られて来た。

 「これ『踊る人形』事件の暗号ではないでしょうか? 旗を持って単語の最後としますが、直立することで表して居るように見えます。」

 ヤンゾム氏はインターネットで確かめながら、アルファベットを並べる。

“Move two abducted people”
(拉致された2人を移動させる)

 「拉致された2人の所在が分かれば、我々としては非常に動きやすい。今すぐ行動へ移りましょう。」

 特殊国境部隊 SFFのニマ兵士は、衛星写真と地図を突き合わせ数人で相談していたが、方針は決定する。

チベット人の知る[秘密の通路]を用い、監視台が在る奥の拠点へ向かう前に、拉致被害者を救出する作戦が立案された。
 

 2020年5月5日

 現地の人々より「天獄の谷」と呼ばれる秘密の通路は、最も狭き箇所60センチと云う峡間きょうかんのことである。

木々と積雪にとざされ昼なおくらく上空から発見は難しい。
 

 暗い内に森林へ分け入り、幅の広い場所から岩壁がんぺきをザイルで降下こうかするとそこは、

落差100メートルの急流と落石が諸人を襲い、迅雷じんらいのようにうね牆壁しょうへきは電波を狂わせ、眼前を塞ぎ進行を阻む。

 河筋かわすじの道なき道を石竜子とかげが如く岩へ貼り付き、羚羊かもしかの如く跳ねけば、明るく開けた場所が見えてきた。
 

 ここまで来れば電波が届き、衛星電話もドローンも使える。

 丘側から中国共産軍を監視する特殊国境部隊 SFFから、さらわれた2人はまだ来ていないと知らせが入り、しばらくこの場所にて待機だ。

 チベット兵が、中国共産軍のテントまで小型ドローンを飛ばすと、ボサボサ髪のロイは、また体操をしているのが見えたのだが、

ドローンに気付いたか、体操を止め何か話しだした。と云うより口だけ動かしているのか?
 

 ドローンの画面を見たチベット亡命政府職員のヤンゾム女氏が、口の動きを読むと、

 「2人はすぐ自動車で連れて来られる。」

 30分ほどして自動車が3台到着した、

ツァムジュ少年は2台目に、運転手のパラミタ女氏は3台目に乗せられ、2人は分けられている。

 首締め強盗のパーカーと、部下の男たちは、人質2人を自動車から連れ出してきた。

 「…… もっと丁寧ていねいにあつかえ―――― よぉ少年! 元気だったか。」

 「すいませんパラミタさん、捕まってしまって……」

 ツァムジュ少年僧も、パラミタ女氏も元気そおだ。

 「君たち、あまり喋るんじゃ有りません。」

 首締め強盗のパーカーが2人をたしなめる。
 

 自動車で移動するには難しい奥の拠点へ、徒歩で移動すべく、

頭に包帯を巻いたゴドフリー・ノートン弁護士を先頭に、モラン大佐が隊列を編成しようとしていると――――

 チベット兵たちがその前へ躍り出た!

 ノートン弁護士は、驚きのあまり飛び上がって腰を抜かし、モラン大佐は人質を、一旦テント内へ押し込んで行く。
 

 正面のにらみ合い、ののしり合いに中国共産軍兵士らは、上官を残し下士官までテントから出ていった。

 今度は、側面からもののしり合いが聞こえ出す。

 これには共産軍の上官も対応を余儀なくされ、残されたのはモラン大佐たちだけとなった。

 「俺は様子を見て来る。ロイ、お前はココを離れずこの2人を見張っててくれ。」

 モラン大佐が、ボサボサ髪のロイはじめ他の部下にも仕事を割り振っていると――――
 

 「君、ロイなんて名前だったかねェ、」

 ―――― 首締め強盗のパーカーがに落ちぬ様子で口を開いた。

 「名前はいくつか持ってるので、今回はロイと呼んでください。」

 ロイがパーカーに手を差し出すと、パーカーもそれに応じ握手を交わしながら。

 「ふむ…… まあ良いでしょう。ではロイ、人質の見張りを頼みますよ。」

 そう言い残しパーカーまでもテントから出て行く、これでテント内は、

 ツァムジュ少年と、運転手のパラミタ女氏、そしてボサボサ髪のロイの3人だけとなる。

 「それでは、帰りましょうか。」
 

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新世界秩序しんせかいちつじょガルワン攻防(Galwan attack and defence)6
2024年11月25日 ㈪ 12:00公開

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新世界秩序しんせかいちつじょガルワン攻防(Galwan attack and defence)4
 
新世界秩序しんせかいちつじょ(New World Order)

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