「文代さん、今日も明智クンの用事でお出かけですか、」
「あっ、波越警部、いらっしゃいませ。」
『明智 探偵事務所』のドアを何時ものように勢い良く開ける警視庁第一課 波越警部と、
雑務を手早く済ませた文代は、入れ違いに事務所を出ることとなった。
「――――文代さん、お疲れさまでした。ここは僕がヤルので、よろしくお願いします。」
明智 小五郎は例のモジャモジャ頭を揺らし、ニコニコしながらそう言うと、もうアームチェアから立ち上がって波越警部を何時もの長椅子へと誘い、
流しの前で「コーヒーでしたね」
とドリッパーにフィルターを折り付けている。
「明智クンの意見だと『明治維新』で物部氏は復権した事になるよ?」
「飽くまでも仮定ですけどね……」
明智は今日も得意の持論をぶつようだ。
邪魔をせぬようそっと扉を閉め、明智からの頼みを快諾した玉村 文代は表へと出た。
初秋の暖かな陽射しが頬を火照らす午後のこと――――
「面白そうなモノを探して来て欲しい、ボクは退屈で間が持たないのだ。」
そう言った時の、
明智の屈託のない朗らかな笑顔と、コーヒー豆の挽かれる薫りとが一緒になって文代の脳裏へくっ着いていた。
こんな時、彼女には心当たりが有る。京橋から銀座にかけて美術品を置く店には事欠かない。
何か云われの有りそうな骨董でも美術品でも見付けられれば、明智の手持ち無沙汰も少しは和らぐに違いなかった――――
――――それでは、
『明智 探偵事務所』の在る『水天宮前駅』から京橋を目指し、ぶらりと街を歩いてみよう。
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