④ 九龍籠城(The Besieging Demonstrators in Kowloon)5

 しかしてそこに彼女たちを待っていた物は、【天网工程スカイネットプロジェクト 監視システム→顔情報読み取り→個人識別】

 [アイリーン・ノートン 女性 アメリカ人 オペラ歌手]
 [バーナデット・チェン 女性 香港人 Web新聞記者]
 

 張り込んでいた白Tシャツ軍団に司令が走り「こっちだ!」と一人が叫んだ、三人の男の醜き形相は迫る。

 ゴドフリーの姿こそ見い出せないが、近くに居るのは確かな事だ。2人は逃れるために連れ立ちて男たちがそれを追う、

白Tの男たちの前を香港の人の森がはばみ、男が棍棒を振れば華開く傘はそれをさえぎる。

 アイリーンは黒覆面で顔をおおい再び中文大へと息を潜めた。
 

 「いつまでも大学に潜伏して居る訳にはいかないですね。」

 バーナデットが心配してそう言ってくれるけれど、正規にアイリーンが香港を離れれば、夫へただちにバレるだろう。

 アメリカ人なのだから香港アメリカ総領事館へ助けを求めるのが正当な行動だろうが、ゴドフリーなら情報を得てしまうに違い無い、

アメリカも一枚岩では無い、ディープステートの息のかかった者は何処にでも居る、ならばどうするか……

 ならば非正規ルートで何処かへ、「例えば台湾」は、どうか?
 

 大陸をたどれば中国共産党が待ちかまえ、海へと活路を求めて台湾に亡命する香港人は何人か居る。

 失敗すれば中国共産党当局に拿捕され、裁判へ掛けられて仕舞うに違い無い。

 アイリーンならば捕まっても、裁判にならないかも知れない、しかしゴドフリーの元に送り返されるのは必定であろう。

 非正規の冒険を試みるか。正規の選択で愚かに夫へ見付かるか。決断の時は近付いている。

 2018年12月中旬、香港中文大学[香港アジア太平洋研究所]が行った18歳以上、約700人の香港市民を対象とする電話アンケートによれば。

 香港の18~30歳の若年層の51%が ❝機会があれば海外へ移住したい❞ と考えている事が、2019年1月7日までに分かった。

 これには中国共産党の影響が強まる中、香港の原則である『一国二制度』が守られない危機感が背景に有る。
 

 ただ、1997年に香港がイギリスから離れて以降、中国本土から香港への移住者は100万人に及び、

人口が約750万人の香港で、今や8人に1人の割合となった。

 1980年11月30日まで、中国からの密航者は九龍カウロン市街地へ入りさえすれば香港の居住権を与えられ、この人々が香港発展に寄与した歴史もあるのだ。
 

 バーナデット・チェンが語るには。

 「私の祖父も毛沢東に酷い目に合わされたチャイニーズの一人です。

 京劇の女形だった祖父は ❝男が女の格好するな!❞ と、文化大革命で迫害を受け、中国共産党の手の届かない香港へ、

何も持たず着の身着のまま…… 逃げざるを得ませんでした。

 ―――― 香港が中国へ返還されるのが決まった頃は、まだ祖父母も生きていて、

家族会議を開き、親族たちで危険を分けて、叔父と叔母や従姉妹たちはカナダへ、私の両親は香港でやっていた飲食店を続けてカナダの親戚を支援しました。

 皆がそうしてきたんです。」
 

 香港の中国返還までに、約30万の香港人と資産が他国へと流れ出て ❝香港の死❞ が訪れるのではないかと危惧されたが、

 [鄧小平路線]の経済優先主義は、返還後の20年で香港を『アジアの金融センター』へと登り詰めさせた。

 しかし今回の【逃亡犯条例 改正案】が再び大量の香港の頭脳を海外流出させ、そこへ経済優先主義を否定する[習近平路線]も相まって、

如何なる結果を導き出すのか、それは未来が訪れてみなければ判らない。
 

 11月11日、全労働者にゼネストが呼びかけられ多くの地区でデモ参加者と香港警察が激しく衝突し、

警察はゴム弾や催涙弾を発射する。香港中心部のビジネス街でも催涙ガス弾を発射した。

 香港中文大学では籠城戦が展開され、警官隊がデモ参加者たちへ催涙弾を発射する。

 同日の朝、香港北東部の西湾河サイワンホーの交差点を封鎖しようとしたデモ参加者と、銃を手にする警察官が揉み合いとなり、

近付いて来た黒いフェイスマスクの男性(21)に向け至近距離から発砲、

男性は目を見開いたまま路上へ倒れて出血し、病院に運ばれ手術を受けたが重体、現在は回復に向かいつつあると言う。

 同11日、歩道橋でデモ参加者と口論になった男性が、「あなたは中国人ではない」と言った後、可燃性の液体をかけられ火を着けられる事案が発生、

男性はシャツを素早く脱ぐも重症、病院へ運ばれる。

 さらに同日、警察のオートバイが数回に渡り、デモ参加者たちへ突っ込んで行く場面を撮影した動画が、オンラインで拡散された。
 

 13日、激しい衝突が続く香港中文大学が、学期打ち切りを決定する。

 同日の夜、香港北部の新界地区で抗議活動に参加していた少年(15)の頭部に、香港警察が発射する催涙弾が直撃し重体となり、

搬送先の病院で緊急手術が行われた。

 14日、前日の13日に上水シェンシュイ駅付近でデモ隊とそれに反対する市民が衝突した現場で、頭にレンガが当たり重体となっていた男性(70)が死亡する。

 同日14日、習近平 国家主席はブラジルで開催された、ブラジル・中国・ロシア・インド・南アフリカ共和国の5ヵ国カ国で構成する、

第11回 BRICSブリックス 首脳会議で、「暴力と混乱の制止、秩序の回復が香港の最も差し迫った任務」と発言。

 8日に香港科技大学生が亡くなって以降、デモ隊と香港警察の衝突は激化していく。
 

 15日の夜、香港中文大学キャンパス内に立てこもり、香港警察と長期間にらみ合いを続けてきた学生らがこれ以上、

大学内で衝突が拡大すれば大学幹部の責任問題とされ、学内の自由がより失われるとの懸念から拠点を中文大より、

 香港理工大学へ移行し、デモ参加者らは籠城戦を決意する。

 中国共産党は香港警察に重圧をかけ続け民主化デモへ対し、暴力弾圧へと完全に移行した。

 これにデモ参加者たちは火炎瓶などを使用した抗議活動を続けるとしている。
 

 16日、香港理工大学を警察が包囲する香港警察が[警告 催涙煙]の旗を揚げ、催涙弾は白煙を吐き、放水銃が催涙剤を噴く。

 触れれば皮膜は腫れ上がり、瞳を焦がして開けている事が出来ない。ただ催涙弾と火炎瓶が交差する声だけが遅くなっても響いた。

 香港の自由が消える恐れと、逮捕される怖さでは、自由が消える恐れが勝つ、

それだから「ミッキー」「ピカチュー」とお互いを愛称で呼び合うデモ参加者も、救護ボランティアも10代・20代と皆が若い。
 

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