④ 九龍籠城(The Besieging Demonstrators in Kowloon)6

●次へ→

←前ヘ■


 

 

 11月17日、九龍カウロン半島の中心部に位置する公立の研究大学『香港理工大学』は理系だけでなく文系も備えた総合型大学で、繁華街の佐敦ジョーダンも近く、

 構内には、中・高生をふくむデモ参加者が立てこもり、

 「奴隷より反逆者たれ」「絶対に降伏などしない」

 の合言葉の下、香港人の自我同一性と自由のために、遺書をしたため、火炎瓶を作りバリケードを築いて、大学を包囲する警官隊と抗争を繰り広げる。

 同日、香港ディズニーランド帰りにデモ見学の観光の学生も、デモ参加者として逮捕される有様で、理工大の外側でも香港警察の取締りは尋常ではない。

 ❝プレス❞ と書かれたベストを着る記者でさえ安全とは言い難い状況だ。

 香港警察の装甲車が理工大へ突入しようとして炎上した。

 2019年11月17日のこの日、武漢ウーハン市が在る中国 湖北フーペイ省の男性(55)に『武漢人工ウイルスCOVID-19』の世界初症例が現れるも、

中国当局は感染症情報を隠蔽いんぺい、さらに11月下旬には、39歳から79歳の男女9名が感染。(中国政府の非公表資料から)
香港紙サウスチャイナ・モーニング
 

 18日未明、学生たちが占拠する香港理工大を照らし出す警察の投光器、空から人々を浮き上がらせる月明かり。

 自由を信じて結集した学徒らへ、刻一刻と囲み込む武装警官の群れ。

 「火炎瓶や弓矢など武器による攻撃を止めなければ実弾で反撃する」そう明記された掲示を掲げて、一歩一歩と大学へ進行する香港警察。
 

 香港理工大学に籠城する学生代表は未明に会見し、「理工大が『六四天安門事件』の再現にならないよう阻止してほしい」と各界に呼びかけると、

理工大学長も「警察に武器使用の一時停止」と、「学生は平和的に大学を離れるよう」声明を発表した。
 

 夜になり、香港理工大学に籠城していた学生たちは陸橋からロープをつたって降りると、下では複数のバイクが待機していて警察の包囲から脱出する。

 大学の在る九竜半島の複数箇所でも衝突が起こり、この日だけで約800名が身柄拘束された。

 理工大の学生たちを救おうと集った市民も、報道記者も救護ボランティアも皆が、香港警察に逮捕されて仕舞う。

 だが大学内には、なおも千人の学生が留まり、警察側とのにらみ合いは続く。

 同日18日、香港高裁『高等法院』は、林鄭月娥Carrie Lam 香港行政長官が先月10月に緊急条例を発動して制定した[覆面禁止法]へ対し、

基本法違反(憲法違反)とする判決を下した。
 

 19日、アメリカ議会上院は香港の自治と人権の擁護を目的とする『香港人権民主法』を全会一致で可決。

 20日早朝、未だ理工大に立てこもる学生の一部が警察に向け星条旗を振りアメリカ上院の『香港人権民主法』の可決を祝い、同時に抵抗の意思を示す。

 香港警察側は投降を呼び掛ける一方、立てこもった学生の全員を暴動罪で逮捕する姿勢を崩さない、

学生が下水道から脱出するのを防ごうと、警察官は道路のマンホールを開け、脱出ルートを潰しにかかる。

 中国共産党の息のかかった治安当局によれば、学生600名が投降し700名を逮捕。

 民主化活動の影響で、14日から休校している香港各地の小中高校が授業を再開した。
 

 21日、これまでで最年少の12歳になる男子中学生が、器物損壊罪で有罪判決を受ける。

 検察によると、本人は容疑を認めており、10月3日「神は消滅した、香港を解放せよ」などの主張を、

旺角ウォンゴッ警察署や太子駅の壁へスプレーで書いている処を私服警察官が目撃、自宅まで尾行したと言う。
 

 24日、区議会議員選挙が実施された。投票率は過去最高の71.2%、民主派が85%以上の議席を得て圧勝。

 27日、この日アメリカ・トランプ大統領が署名して『香港人権民主法』が成立する。
 

 同27日、香港警察に身柄拘留されていたバーナデット・チェンと面会する者が1人居た、

アイリーンの夫のゴドフリー・ノートンだ。いや、❝夫であった❞ と過去形にするのが正解か、

 「アイリーンは何処に居る。」

 「ずっと一緒にいた訳じゃ無いので分かりません。私たちは友人関係かも知れませんが、束縛し合ってる訳では有りませんので。」

 「一緒に大学に居たんじゃないのか! 君が誘ったんだろッ、」

 「大学の事を話したのはその通りです、しかし私たちは仲間であり戦友なのだから、力が欲しい時は協力し合いますけど、後は拘束などしませんので。」
 

 「…… じゃあ、最後に会ったのは?」

 「言って良い事になってますから全てお話ししますよ。

 最後に会ったのは―――― 今月17日の昼過ぎでした。

 夜までには大学を脱出して、台湾へ今頃到着してるでしょう。」

 「いや、そんなハズは無い! アイリーンは何処を見付けても居なかった。」

 「いえ、台湾に行くって言ってました。貴方が知らないのなら無事に到着できたんでしょうね、良かったです。」

 「いやそんなハズは無いんだ……」

 今やこの哀れな男に、これ以上かける言葉などあり得ようか。

 「信じようと信じまいと、貴方しだいです。」
 

 1544年、ポルトガルの船員たちはユーラシア大陸から東南、太平洋西岸に浮かび翠緑すいりょくに耀く万丈の山を持つ台湾を讃えてこう呼んだ、

 「麗しの島」フォルモサと。

 今日も7名の亡命者が香港より台湾へ到着している。

 「女性3人に、男性4人ですね。」

 「あっ、ちょっと待ってくれ君、」

 長時間に渡り船底で揺られていたとも思えぬ、シュッと背を伸ばした一人の紳士が、係の者へ声をかけてきた。
 

 「彼が話すには、

 「アメリカ合衆国 国防総省の関係者が居たら面会したいんだがね。❝世界で計画的に起こりうる感染症を利用した人類監理の件❞ で、お話ししたい。」

 と言うのですが。」

 「―――― 感染症を利用した人類監理…… なる程、会って見よう。」

 国防総省マット・スプリングフィールド中尉は、2018年6月に台湾の台北で新庁舎も落成した、

実質アメリカ大使館にあたる『アメリカ在台湾協会AIT』の情報担当将校だ。
 

 その細身の紳士を見た彼が、

 「大変でしたでしょう、コーヒーとハンバーガーでもいかがですか、わたしはこれが好物なんです。」

 スプリングフィールド中尉が、蒸しハムバーガーをそうテーブルへ差し出すと、

 「失礼します。」紳士はにわかに、袖から伸びるたおやかな指で銀縁メガネ・短髪のカツラ・立派な口ヒゲ・口内から詰め物を取り外し、

 「私はアメリカ合衆国の旗と、それが象徴する共和国すべての人に自由と正義を備えた、神の下で分かたれぬ一つの国家に忠誠を誓います。」

 起立し合衆国旗に向きなおり、右手を心臓の前へ当て[忠誠の誓い]を行う一人の淑女の顔が現れた。

 アイリーンは今、台湾の地に有る。
 

●次へ→

新世界秩序しんせかいちつじょガルワン攻防(Galwan attack and defence)1

←前ヘ■

新世界秩序しんせかいちつじょ九龍籠城(The Besieging Demonstrators in Kowloon)5
 
新世界秩序しんせかいちつじょ(New World Order)

関連記事

秦氏千年の計14 チベットの吐蕃とばん王国
 
チャイナ・スピーカーの毎日新聞『ヘイトはメディアが捏造する』


チベットの不思議な少年(Tibetan Mysterious Boy)1

チベットの不思議な少年(Tibetan Mysterious Boy)2

チベットの不思議な少年(Tibetan Mysterious Boy)3


コロナの城(The Corona Castle)1

コロナの城(The Corona Castle)2

コロナの城(The Corona Castle)3

コロナの城(The Corona Castle)4

コロナの城(The Corona Castle)5


香港人かく闘えり(Hongkongers fought like this)1

香港人かく闘えり(Hongkongers fought like this)2

香港人かく闘えり(Hongkongers fought like this)3

香港人かく闘えり(Hongkongers fought like this)4

香港人かく闘えり(Hongkongers fought like this)5

香港人かく闘えり(Hongkongers fought like this)6


九龍籠城(The Besieging Demonstrators in Kowloon)1

九龍籠城(The Besieging Demonstrators in Kowloon)2

九龍籠城(The Besieging Demonstrators in Kowloon)3

九龍籠城(The Besieging Demonstrators in Kowloon)4

九龍籠城(The Besieging Demonstrators in Kowloon)5

九龍籠城(The Besieging Demonstrators in Kowloon)6

いつもありがとうございますm(_ _)m
                  
にほんブログ村 小説ブログ ライトノベル(小説)へ
ライトノベル(小説)にほんブログ村

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA