『万葉集』巻八
「大口の、まかみの原に、ふる雪は、いたくなふりそ、家もあらなくに」
舎人娘子(飛鳥時代の女官・歌人)
と歌にも有りますように、オオカミは『真神(まことの神・正しい神)』・『大口真神』と呼ばれます。
日本武尊は東国平定のおり、武蔵の国の峠を軍をひきいてお越えになる途中、魔物に行く手を阻まれます。
すると、白オオカミがどこからともなく現れ道案内をして、日本武尊とその軍は魔の手から脱出することが出来ました。
尊は言われます、
「大口真神よ、この地に留まり魔物を退治しなさい」と。
オオカミを眷属として狛犬にする、「御嶽神社」や「三峯神社」は、奥多摩から秩父に創建され、
農作物を荒らす鹿や猪など、大型の草食動物から護ってくださる神、害獣除け、災難除け、火防、盗賊除けの神として『おいぬ様』オオカミは、
ここ日本でも古より、信奉され続けてきた事が分かっています。
三峯神社では「お犬様」に赤飯をお供えする『御焚上祭』を今も毎月2回行ない、
母オオカミがお産の際のもの寂しき鳴き声を聴き付けると(柳田國男「山の人生」『三峯山誌』)、
秩父地方や信濃の人々は赤飯を炊いて巣穴へお祀りしたと言います。
『悉平太郎』は、信州信濃は長野県駒ヶ根市の宝積山 光前寺に飼われるオオカミ犬でした。
光前寺の床下で母オオカミが子供を産んだ時、お世話になった和尚様へ母オオカミが一頭残していったのです。
静岡県磐田市の見付天神のお祭りは、かつて「泣き祭り」と言われ、
白羽の矢がたった家では、娘を「生贄」に出さなければならない悲しい慣わしでした。
それを、『悉平太郎』を借りて来て、娘を連れ去っていた「ヒヒ」を退治し、この悪習を止めさせます。
類似のお話しは他の地域にも有りますから、「犬神勢力」と「猿神勢力」の争い、と言う意味も有るのでしょう。
「犬は安産」福犬
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海外の『童話』でオオカミの扱いは、牧畜業が盛んになるにつれ、
「家畜を襲う悪者」として扱われるようになり、
そればかりか、人さえ襲うモンスター『オオカミ男』の様相を呈してしまいます。
一方で日本の「昔ばなし」の中の、オオカミや犬は、良くある「恩返し物」のお話しや、
『オオカミ梯子』のように、人を食べようと襲いますが失敗する物語が有ります。
その他に、『オオカミの眉毛』や『オオカミと娘』のような、
「お前は真人間だから喰わない」とか、
「親切なオババがいるから襲うな」など、
正直者や善人をオオカミは食べない、としたお話しが出てきます。
『オオカミ梯子』でも、罪無き人を食べようとしたので、失敗してしまったのかも知れません。
これは『真神』としてのオオカミの神性が、「昔ばなし」にも反映されているからなのでしょう。
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